迷っているという事実こそが
僕ら人間が本当は帰るところなのです
瓜生崇氏
自殺を思い詰めるほど悩み苦しんで31歳で脱会した。システムエンジニアの仕事をしながら36歳で縁あった寺の住職となり、自身が所属した教団やオウム真理教の後継団体アレフの信者の脱会支援を続け、100人近いカルト信者の脱会に関わってきた。
活動の中で、重要だと感じるのが、ともに迷うこと、揺らぐことだと言う。
信者の教団は間違っていて、脱会することが正しい、というスタンスでは、「信じる教えは正しい」という信念をより強固にさせてしまうだけ。無理に脱会させても別のカルトに走るなど、正しさへの依存は変わらない。
「『真理』を求めずにはいられなかった思いを理解し、互いに迷っている存在であるという理解に立てるかどうか。そして迷っても生きていけると伝え続けることが大切です」
今、コロナ禍の世界で多くの人が、何が正しい情報なのか、何が正しい選択なのか、見通しにくいまま何らかの選択を迫られている。そんなときに必要なのは、自らの考える「正しさ」に合う情報を集めて理論武装することでも、「敵」をみつけて攻撃することでもないと指摘する。
「間違いないと思っていることは本当は間違っているかもしれないという不安、迷いを引き受けること。不安を消し去るのではなく勇気を持って迷うことです。迷っているという事実こそが僕ら人間が本当は帰るところなのです。」
瓜生崇氏(2020年7月8日 朝日新聞)