【今月のことば 2020年10月】
私は死なない命になりたい
大峯顯(おおみねあきら)氏
いったいどこに、この命の存在の意味があるのか。何のための命か。私が今ここに生きているのはいったい何のためだ、という問いを誰もがかかえて生きているわけです。
この問いの解決が万人に課せられてあることに気づこうとしないで、人生とは出世するためだとか、お金を儲けるためだとか、勝手にそんなことを決めていますが、これは自分個人が勝手につくった人生の構図で、そんな計画通りに人生はいかないから、全く主観的な夢でしかないということがわかります。
そうじゃなくて、われわれのこの世の命は一つの課題を持っているのです。それは、大きな生命そのものの課題です。われわれ一人ひとりのこの個体のいのちの中にある大きな命が、この課題の解決を要求しているのです。
何を要求しているかというと、命が命になりたいと願っているのです。わたしは百年も生きられたらそれで結構だと勝手に個人は言っているけれど、個人じゃなくて個人を生かしている命そのものは、そんな百年くらいのいのちを生きたから満足だとは決して言っていないのです。
そうではなく、私は死なない命になりたい、命そのものになりたい、という願望がすべての個体の深い深い底にひそんでいるのです。それが願生(がんしょう)心(しん)、お浄土に生まれたいという願いに他なりません。これを満足しないことには、われわれは本当は死んでも死ねないのですね。
『よきひとの仰せ』 大峯顯氏