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【今月のことば 2024年7月】

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【今月のことば 2024年7月】 東淀川区豊里 真宗大谷派 教応寺  僕たちはとても身勝手で矛盾した生きものだ 森達也氏

レモンの木を育てている。毎年、アゲハ蝶が卵を産み、サナギから羽化する姿を見せてくれる。その一部始終に感動し「生命の神秘だ」とつぶやいた。

少し離れたところにあるモミジには、黄緑蛍光色の虫がよく出る。この虫に刺されると、まるで感電したかのような激痛が走る。一度刺されてからもうコリゴリで、毎年入念に薬を撒いて予防している。

どちらも「私」である。

その「私」の身だけでなく「身の回りのほとんど」「 たくさんの「いのち」の犠牲のうえに成り立っている」。

そのはたらきすべてに感謝しているだろうか。とんでもない。

「とても身勝手で矛盾した」自分を少しは顧みているだろうか。

「そんなこと言うてたら…」
「仕方ないじゃないか…」

と言い訳をして、考えたふり、見て見ぬふりをしてごまかして、口先だけで「あさましい自分だ」と言っている私がいる。

南無阿弥陀仏

【今月のことば 2024年7月】 東淀川区豊里 真宗大谷派 教応寺 僕たちはとても身勝手で矛盾した生きものだ 森達也氏 食べるための牛や豚や鶏だけじゃない。実験に使われる犬やサルやウサギやマウスだけでもない。僕ら人間は、膨大な数の生き物を殺しながら生きている。水を確保するためにダムを作る。土地を増やすために海を埋め立てる。どちらも膨大な数の魚や虫や小動物が犠牲になる。僕らはハエや蚊を殺す。ゴキブリやシロアリを駆除する。畑や田んぼでは大量に農薬を撒いて害虫を殺す。  虫たちが悪いわけじゃない。ただ彼らの存在が僕らにとって迷惑なだけだ。だから僕たちは虫を殺す。君はカブトムシを叩きつぶせるかい? 僕にはできない。でも、ゴキブリなら、丸めた新聞紙で叩きつぶすことができる。なぜだろう。不思議だね。いつのまにか僕らは、ハエや蚊やゴキブリは殺されて当たり前だと思ってしまっている。  前に書いた思考の停止、要するに麻痺だ。この麻痺がないと生活は維持できない。確かにそうだ。でも時には、この麻痺について、この矛盾について、少しくらいは考えた方がいい。   僕たちはとても身勝手で矛盾した生きものだ。それが良いか悪いかは別にして、とにかく君の身の回りのほとんどは、たくさんの「いのち」の犠牲のうえに成り立っている。 『いのちの食べかた』森達也氏

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