【今月のことば 2022年4月】
海兵隊員としてベトナム戦争の最前線で戦っておられた方によって書かれた本です。
読み進めていくと、実際の戦争の恐ろしさや想像もしたこともないような残酷さが生々しく描かれています。
それは、決して映画やテレビなどで見る戦争と同じものではありませんでした。
正直、読みながら気持ち悪くなるところもありました。
海兵隊に入り、人を殺す方法を徹底的に訓練される中で、ためらいや罪の意識をだんだんと失っていく。
そして、実際に戦場におもむき、最前線でジャングルの中での戦闘に参加する毎日を送られました。
そんな中、ある戦闘の最中に逃げ込んだ防空壕の中で偶然、赤ちゃんを出産している女性に出遇われます。その体験がアレンさんの心を大きく変えていくことなります。
人は、その置かれる環境やその時々の縁によって、思いもよらない方向に進んでいってしまう存在である。
また、人を殺すことへのためらいや罪の意識も失ってしまうような存在であると同時に、思いがけない出遇いによって命の尊さに目覚めていけるような存在でもある。
その体験を、「私の人間性にとって鏡のような役割」と言われます。
「自分はまだ人間のままでいるだろうか」
中国の僧、善導大師は「これ経教はこれを喩ふるに鏡のごとし。しばしば読みしばしば尋ぬれば、智慧を開発す。」と言われました。
仏様の教えは、譬えればそれは鏡のようなものであると。
それはまさに、「あなたは、今本当に人間と言えるような生き方をしていますか」という問いと共に生きて行くということだと思います。
親鸞聖人は、「さるべき業縁のもよおせば、いかなるふるまいもすべし」とおっしゃいます。私たち人間は、出遇う縁によってどのようにでもなってしまう存在であると。
ロシアとウクライナの問題を、自分とは無関係のことのように生きている私にこそ、
「おい、お前にこそ、鏡が必要だぞ」
と呼びかけられているように思います。
「お前は、今間違った方向に進んでるかもしれないぞ。」
「ゆっくり進んでで気付いてないのじゃないか。」
「確かめろ、確かめろ。お前はそのままじゃだめだ。必ず間違うぞ。」
と言われているように思います。
そして、それと同時に
「まだ、間に合う。大丈夫や。確かめろ。ずっと教えに確かめ続けていくんだ。」
とも、言われているように思います。