【今月のことば 2019年1月】
量や長さが問題となるのではなくて、
大事なことは方向が決まることなのです
宮城顗氏
ほんとうに命を、この人生をほんとうに生きるためには、量や長さが問題となるのではなくて、
大事なことは方向が決まることなのです。方向が決まるということは、かならず死ぬ身としての
人生がはっきりするということです。死を押しのけて、あるいは死から目をそらして、長生きと
いうことにすがりつくのではなくて、どれだけ長生きにすがりついてもかならず老、死というこ
とはあるわけですから、かならず年を取り、かならず死ぬ私が、その年を取り、死ぬということ
をほんとうに受け入れていける歩みを見つけることです。
一時期、死にがいということばがはやりましたが、生きがいというものは、そのことのために
は一生が投げ出せる、そのことのためならば自分の一生を投げ出していける、そういうものを見
つけるのが生きがいです。ですから、生きがいはかならず死にがいです。自分の命以上に大事な
ものを見つけた。自分の命以上の大きな世界に会ったということがなければ、人生の方向という
ものは決まらないし、そういうものに会わなければ、結局老いて死ぬ私というものは、かならず
大きな不安をはらんでいくわけです。テレビなど、特にコマーシャルで描かれています幸せとい
うものは、健康で若さがあって経済的に力がある間だけの幸せであって、それしか見つからない
ときには、老、死、かならず年を取っていき、かならず死ぬ身であるかぎり、結局最後は、こん
な私になってしまってといって死んでいかなければならないのです。ですから自分の人生全体を
あげて歩んでいける、そういう道をもっていないならば、どれだけ命が長くなったとしても、そ
れはけっして人間としての長命の道ではない、かえって苦しみを長く味わうだけなのです。
『正信念仏偈講義 第四巻』宮城顗著
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仏教のことばは、私を見通し言い当て、本当のことを教えてくれます。 それが私の生きる力になっています。 教應寺住職
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